タブレット学習

私がフランチャイズで始めた塾は、パソコン上で問題を解くスタイルの塾でした。

スモールステップの自主学習、生徒が何人いても指導者を雇わなくて良い。

 

オーナーにとても都合の良いシステムでした。

 

その後、その教材をやめてから取り入れたのは

単元ごとに短いアニメーションで解説を見た後で類題を印刷して解くスタイル。

 

これもスモールステップの自主学習、指導者は管理者としての役割を担います。

 

授業をアニメーションが行い、自分で類題を大量に印刷して解く、答え合わせも自分で出来る優れもののシステムでした。

 

おまけに、学校の成績がものすごく上がりました。

 

でもどんぐり倶楽部に出会って、どんぐり倶楽部を知れば知るほどそのシステムが子どものためにならないと思いやめました。

 

目先の効果は抜群

タブレットやパソコンを使って行うICT学習は、テストの点数を上げるという点においては抜群の効果を発揮します。

 

1人1人のつまづきの管理、再学習など人間の管理者は到底かないません。

 

また、わかるまで何度でも動画やアニメーションで解説をしてくれます。

人間だったらイライラして叱られるような場面でも、機会はイライラせずに何度も何度も同じ説明をしてくれます。

 

言葉や描かれた絵図だけで理解が出来ない子たちでも、その絵図が動き、わかりやすく解説してくれるので理解も深まります。

 

答え合わせも機械がしてくれるので先生が楽になります。

お父さんお母さんも勉強を見なくてよくなります。

 

なんかいいことづくめのような気がしますが、当然デメリットがあります。

 

便利すぎる

そう、便利すぎるのです。

 

絵図で解説してくれるアニメーションを見ると、文章を読んで視覚イメージに再現する必要がなくなります。

 

関連知識もご丁寧に解説してくれたりすると、自分で疑問に思って調べることがなくなります。

 

自分の苦手を把握して、それを自分で掘り下げたり、間違えた問題をとっておいてやり直すというようなことをタブレットがやってくれると、その習慣が身につくことはありません。

 

自分で答え合わせをしないでよいと、答え合わせをしようとしなくなります。

というか最近の中学生は問題集に付属している解答・解説冊子をみて丸つけもできません。だから最近のワークは解答・解説が問題集と全く同じレイアウトになっているんです。

 

その他もろもろ、勉強を通じて身につけるべき将来必要な能力が身につかなくなってしまいます。これは塾に依存してかえって学力が低下するシステムに似ています。

 

塾通いで加速する学力低下

 

わかりやすく例えるとすると、自転車を乗り始めた子どもに「電動自転車」を買い与えるようなものです。

 

足腰が弱ったシニアには「電動自転車」は便利で活動範囲が広がり健康のために良いかもしれません。

 

しかし、子どもに便利すぎる電動自転車はいかがなものでしょうか?

本来自転車に乗ることで鍛えられる筋力が鍛えられないことになりませんか?

 

テスト勉強限定の効果

タブレット学習の効果は「テスト勉強」に限定されます。

 

実生活ではタブレットで学ぶようなことは極めて稀です。

 

会社に入った場合、動画やアニメーションで学ぶ知識は多少あったとしても、殆どは人から学びます。座学で仕事を学ぶOff-JT(Off-the-Job Training)よりも職場の上司や先輩から実際の仕事を通じて知識や技術を学ぶOJT(ON-the-Job Training)が圧倒的に多いです。

 

小学生の頃からタブレット学習に依存してしまうと、人に質問をしたり、人から教わることが苦手になってしまいます。

 

また、正解がない問いや問題に対し、テスト勉強に限定されるタブレットでの学びは非対応です。なぜなら正解がない問題は、個人個人が自分で考えて、自分で調べて、自分で学んで、自分なりの正解を出さなければならないからです。

 

他人の解決策がそのまま自分の解決策にはなりえないのです。

 

もう一度言いますが、タブレット学習の効果は「テスト勉強」に限定されます。

 

しかも、思考力を問うものではなく「暗記中心」のテスト勉強です。

偏差値の高い学校に入るためには必要でも、殆どが「社会に出たら役に立たない知識のテスト勉強」です。

 

ですから、その「社会に出たら役に立たない知識のテスト勉強」を通じて自分で考え、自分で学ぶ能力を高める必要があるのに、その大事なところを塾やタブレットに任せて「点取りマシーン」に仕上げてしまうから、実生活に適応できない若者が増えてしまうのです。